「破産をしたら身包みをはがされる?!」②

(先日アップしたコラム「破産をしたら身包みをはがされる?!」① の続きです。)
前回のブログでご説明したとおり、現行破産法では、「自由財産の範囲拡張制度」が設けられており、裁判所がこの拡張を認めた場合に、法定自由財産以外の財産についても処分対象から外すことができるとされています。
●福岡地方裁判所の運用基準
この点、福岡地方裁判所では、次のような財産については、原則として自由財産の拡張を認め、処分対象の財産から外す運用がなされています(管財人の判断等で例外もあります)。ただし、次の財産に該当する財産と既に自由財産として認められている財産との合計額が99万円以下の場合に限ります。
・預貯金(残高合計20万円以下である場合に限る)
・生命保険解約返戻金(見込額合計が20万円以下である場合に限る)
・自動車(処分見込額合計が20万円以下である場合に限る)
ただし、初年度登録から5年を経過したものについては、外車又は排気量2500ccを越えるものでない限り、処分見込額を0円とみなす。
・居住用家屋の敷金返還請求権
・電話加入権
・退職金債権のうり支給見込額の8分の7相当額(8分の1相当額が20万円以下である場合には、当該退職金債権の全額)
・家財道具
●基準に該当しない財産についての「自由財産の範囲拡張」
さらに、先の福岡地方裁判所の運用基準に挙げられた財産に該当しない財産や、財産の種類としては該当するけれど量的にオーバーしている財産ついても、破産者が拡張の申立てをすることによって、裁判所の判断で「自由財産の範囲拡張」が認められる場合もあります。
ただし、「自由財産の範囲拡張」を認めるか、どの範囲で認めるかは、破産者の生活の状況、法定自由財産の種類及び額、将来収入を得る見込み、その他の事情を考慮し、判断されます。
また、この場合も「99万円以下」というラインがあり、合計額が99万円を超える財産の拡張は、かなり厳格に判断されています(一切認められないわけではありませんが、例外的な場合のみしか認められていません)。そして、勿論、合計額が「99万円以下」の場合であっても、裁判所の判断で、全ての範囲で認められない場合もあります。
さらに、家などの不動産については、残念ながら、「自由財産の拡張」が認められることはほぼありません。
●まとめ
以上、”破産手続きにおいて残せる財産”について説明させて戴きました。
法定自由財産以外の財産について「自由財産の範囲拡張」が認められるかは、なかなか判断が難しいところですが、とりあえず、生活に必要な家財道具などは法定自由財産として処分の対象にはなりませんので、ご安心いただけたらと思います。
併せて 会社・法人破産の解説 ページもお役立て下さい。